「大規模小売店舗立地法」とはどのような法律でしょうか?届出が必要な店舗やその理由、法律の仕組みと届出から出店までの流れについて説明していきます。
大規模小売店舗立地法(大店立地法)の意味と手続き内容
「大規模小売店舗立地法」とは店舗面積1,000㎡を超える小売店舗(大規模小売店舗)に対する法律で、2000年6月1日に制定されました。省略して「大店立地法」と言います。
小売店舗はオープンする8か月前までに建物所有者が都道府県または、市町村に「新設届」を申請しなければなりません。
また対象となる店舗が、増床や建替えなどにより店舗面積や駐車台数などが変更になる場合には「変更届」が必要となります。
そしてその店舗の店舗面積が1,000㎡以下となる場合には「廃止届」を提出します。
届出の対象となる大規模小売店舗とは
1つの建物であって、その建物内の店舗面積(飲食店は除き、物品加工修理業を含む)の合計が新築・増築の有無を問わず1,000㎡を超えるもの
1つの建物とは
①屋根、柱または壁を共通にする建物
②通路によって接続され機能が一体となっている2つ以上の建物
③1つの建物(①②を含む)とその附属建物をあわせたもの
旧「大店法」と「大店立地法」は目的が違う
「大店立地法」が制定される前は「大店法(正しくは大規模小売店舗法(1974年施行・2000年廃止)」という法律のもとに小売店舗の出店が認められていました。
これは、大型店の出店を規制し、周辺の地域商店街や中小小売業者の事業機会の保護・育成を目的とするものでした。
ところが、新たに制定された「大店立地法」は、地域の生活環境を重視、地元住民や自治体が街づくりの視点から大型店の出店を規制・調整するというもので、以前の法律とは目的が大きく変わりました。
「大店立地法」は同時に成立された「中心市街地活性化法」、「改正都市計画法」とともに「街づくり三法」と呼ばれています。
市町村に権限委譲をおこなっている自治体も
政令指定都市や市町村が地域の実情に応じて自らの責任と判断で住民に身近なサービスを提供できるよう、市町村への権限移譲をおこなっている自治体もあります。
例えば大阪府では平成23年1月に府内(政令市を除く)で初めて茨木市へ移譲し、その後も、協議が整った市町村へ順次移譲を進めているところです。
大規模小売店舗立地法の新設届出に必須の16項目と届出後の流れ
大店立地法では、設定された環境指針に基づき、来店車両による騒音や交通渋滞、店舗から出るゴミなど、広範囲な項目が審査対象になります。
新設届出を行うにあたり、必須である16の「届出事項の概要」を紹介いたします。
届出事項の概要
- 店舗名称
- 出店所在地(地番)
- 設置者
- 小売業者
- 新設日(変更日)
- 店舗面積の合計
- 施設の配置に関する事項
- 駐車場の台数
- 駐輪場の台数
- 荷さばき施設の面積
- 廃棄物保管施設の容量
- 施設の運営に関する事項
- 開店時刻及び閉店時刻
- 駐車場利用可能時間帯
- 駐車場の出入口の数及び位置
- 荷さばきの時間帯
届出からオープンまでのスキーム
届出者は、届出後2か月以内に地元説明会を開催、市町村及び住民から徴収した意見書をもとに都道府県(市町村)は審議を行い、8か月以内に県意見として有無を届出者に通知します。
意見がなければ8か月を待たずにオープンできますが、意見が述べられた場合、届出者は届出内容を変更するか、または変更しない旨の通知を行います。
この場合、変更又は通知が行われた日から2か月間は店舗の新設はできません。
なお、同法では8か月前までの届出を必要としているため、新設する日は届出日から8か月+1日の日付を指定して届出される場合が多く、実際の開店日とは異なる場合が多いですが、新設する日が遅れることについての届出義務はありません。
住民等の意見と勧告
大規模小売店舗の届出が行われ、縦覧が開始されると、その内容について地域住民や商工会議所・商工会等個人・団体を問わず誰でも、生活環境保持の観点から意見がある場合は、届出の公告のあった日から4か月以内に都道府県または市町村に対し意見を述べることができます。
そして、都道府県または市町村は届出内容を審査した結果、大規模小売店舗の周辺地域の生活環境保持という見地から必要があると認める場合は、建物設置者に対し、周辺環境を保持するために必要な意見を書面により通知(意見がない場合にも書面により通知)します。
建物設置者は自主的対応策を提示
都道府県または市町村から意見が出された又は勧告を受けた場合、建物設置者はその意見・勧告を踏まえた変更をする旨の届出、または、変更しない旨の通知(自主的対応策の提示)を行う必要があります。
大店立地法の新設届出が必要な既存店舗
新設届出の中には、すでに営業をおこなっている店舗もあります。
店舗面積1,000㎡以下で営業していた既存店舗が増築や増床をおこない店舗面積が1,000㎡以上になる場合も新設届出が必要となるのです。
また、中には店内のバックヤードであった部分を売場に変更するにあたり、店舗面積が1,000㎡を超える場合も含まれています。
つまり、「大規模小売店舗」とは、建物の新築、増築、用途の変更の別を問わず、店舗面積の合計が1,000㎡を超える場合を言います。
そして新設日は、届出日、公告日等ではなく、届出に係る店舗の店舗面積の合計が基準面積を超えて営業する日となるのです。
大店立地法の手続きが簡素化される 特例区域とは?
大店立地法の手続きが簡素化される、特例区域というものがあります。
その意味は?そしてその区域はどこにあるのでしょうか?
商店街の空洞化
大店立地法に変わり、大型店は出店コストが増加する上、環境基準の義務付けによって中心市街地への出店のハードルが上がりました。
そして騒音や渋滞の影響が少ない郊外への出店へとシフトしていったのです。さらに商業だけでなく、病院や学校、市役所などの公共公益施設の郊外移転も進みました。
そして、中心市街地が疲弊、商業機能が低下するという現象がおこってしまいました。
これらを踏まえ、大規模小売店舗の迅速な立地促進が必要な中心市街地に特別区域(特区)が設置され、大店立地法の手続を緩和する特例が設けられたのです。
中心市街地活性化法(中活法)に基づく大規模小売店舗立地法の特例(3パターン)
特例には以下の3つのパターンがあります。
1「第一種特例区域」
認定中心市街地(内閣総理大臣の認定を受けた中心市街地)
2 「第二種特例区域」
都道府県等が中心市街地の活性化のために必要と認めた中心市街地
3 「認定特例大規模小売店舗」
特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に、大店立地法の特例を活用することを明記し、経済産業大臣の認定を受けた大規模小売店舗